いわて大運動会 in 気仙地区
- プロジェクト
- パワーアップ・ジャパンfrom Tokyo 平成27年度
- イベント名称
- いわて大運動会 in 気仙地区
- 開催日
- 2015年8月11日(火)
岩手県気仙地区にある5会場にて、「いわて大運動会in気仙地区」が開催されました。地域の中学校から総勢400人以上の参加者が集まりました。大船度市民体育館でおこなわれた開会式では、主催者として東京都オリンピック・パラリンピック準備局スポーツ推進部事業推進課課長内藤典子氏、日本アスリート会議会長柳本晶一氏から挨拶がありました。内藤氏からは「2020年の東京五輪にどんな形でも参加して欲しい」と話が述べられ、柳本氏からは「今日が最高の日になるように頑張りましょう」と参加者に熱い言葉が伝えられました。今回の参加アスリートとして、元サッカー日本代表、秋田豊氏、元プロ野球オリックス・バファローズ選手、本柳和也氏、卓球ソウルオリンピック日本代表、宮崎義仁氏、元アテネ・北京オリンピックバレーボール全日本女子チーム監督、柳本晶一氏、元アテネオリンピック女子バレーボール日本代表、大山加奈氏、元バスケットボール日本代表、田中利佳氏、ソフトテニス2014年世界選手権予選優勝、2013年全日本選手権優勝を果たした、高月琢磨氏のアスリート7名が参加しました。アスリートと触れ合った子ども達は充実した時間を過ごしました。
○サッカー
緑が映えるグランドに、総勢約40名のサッカー部部員が集まりました。サッカーのクリニックでは元サッカー日本代表の秋田氏を講師としてお招きしました。
クリニックの最初に、秋田氏は、子どもたちに練習を「真剣にやる」か「楽しんでやる」か質問をしました。子どもたちからは少し戸惑いが見えましたが、多くの子どもたちは「楽しんでやる」ことに手を挙げていました。
クリニックは、ドリブル、パス&コントロール、1対1、シュート、3対3がおこなわれました。秋田氏は終始子どもたちに声をかけ、子どもたちと積極的にコミュニケーションを取られていました。さらに、技術的な指導だけでなく、「1つ1つの練習に意識を集中すること。意識を集中することが継続できれば上手くなる。上手くなるとサッカーが楽しくなる」というように、練習に取り組む姿勢についても話されました。練習の際には、秋田氏自らデモンストレーションをする機会があり、その技術の高さに子どもたちからは「すごい」といった驚きの声があがりました。
午前の最後には、クリニックの閉会式と質疑応答、写真撮影が行われました。秋田氏からは、「一生懸命サッカーに取り組むことで得られる喜びの方が大きく、楽しい。」と、一生懸命物事に取り組む大切さについて伝えられました。お昼休憩には、積極的な子どもたちが秋田氏にヘディングの方法を伝授してもらっており、関心意欲の高さが垣間見えました。
午後の交流試合では、秋田氏と岩手大学のアシスタント3名、秋田氏に選抜された5名、計9人の「秋田チーム」と6チームで交流戦をおこないました。
○野球
新設された美しい野球場に約30名もの球児たちが集まり、野球クリニックが開催されました。最初に今回の講師である元オリックス・バファローズ本柳氏、サポートにあたる岩手大学の学生の紹介がされ、子どもたちの元気な「よろしくお願いします!」の声を合図に教室はスタートしました。挨拶が終わるとすぐに軽いランニングとウォーミングアップを開始。その際も本柳氏に野球をする上で重要なポイントが細かく教えられていました。最初は緊張していた子どもたちもだんだんと大きな声が出るようになってきました。
午前のクリニックではキャッチボール、捕球の仕方など基礎をじっくり教える時間となりました。本柳氏は1人1人のフォームを確認しながら、また直接個人的なアドバイスをし、その度に子どもたちの目は真剣になっていきました。本柳氏のプロの経験をすべて注ぎ込んだ指導に子どもたちも一生懸命応えようと汗を流しました。
午後は交流試合の予定を一部変更し、本柳氏がピッチャーを務め子どもたち1人1人と対戦する形式となりました。元プロ野球選手が相手といえども、子どもたちはひるむことなくバッターボックスに立ちます。三振して悔しそうにしている選手に本柳氏がアドバイスするなど、参加者全員にとって密度の高い時間となりました。途中の天候悪化により、グランドを使用できなくなるハプニングもありましたが、その時間も本柳氏は子どもたちにメソッドを教えるなど、終始子どもたちにとっては貴重な学びの時間になっていました。
最後に本柳氏から子どもたちに今日の教室の総括と子どもたちに対する今後の期待が語られ、クリニックは閉会しました。
○バレーボール
蒸し暑い夏の空のもと、陸前高田市立第一中学校の体育館に、県内7校の中学校から総勢80名の中学生バレー部員が集まりました。
今回、バレーボールのクリニックでお招きした講師は、元バレーボール女子日本代表の大山氏。クリニック開始前から練習を開始していた中学生部員たちは、汗を光らせながら集合し、現役時の愛称である「パワフルカナ」と紹介された元全日本選手を前に、目を輝かせていました。
クリニックは大山氏の指導のもと、怪我をしない体づくりを意識したウォーミングアップから始まり、レクリエーション形式で瞬発力を鍛えるゲームやボール遊びをした後、オーバーパスやアンダーパスを組み込んだ実践的な練習もおこないました。生徒たちは、大山氏が「本当は高校生がやる練習だよ」と紹介した少し難度の高いメニューにも笑顔で参加し、終始楽しんでいる様子でした。指導していた大山氏も「みんな上手でびっくりした」と言葉にしており、充実したウォームミングアップができたようでした。
ウォーミングアップを終えると、元バレーボール女子日本代表監督の柳本氏が合流し、挨拶をおこなった後、生徒たちをセッター、リベロの班とアタッカーの班に分け、前者に柳本氏、後者に大山氏がつき、パフォーマンス向上の練習に移りました。
セッターとリベロ班では、柳本氏がプレー中の身体の向きや手の構え方から、リベロと連携した実践的な練習まで非常に細かく指導し、生徒たちは終始真剣な面持ちで反復練習をおこなっていました。各学校の顧問の先生も懸命に柳本氏の指導に耳を傾けており、上手く動けなかった生徒に対しては丁寧に個人指導し、上達が見えた生徒に対しては「良くなったぞ」と声をかける柳本氏の指導に刺激を受けていたようでした。練習後、生徒たちからは「難しかった」、「最初は上手くできなかった」といった声が挙がった一方、先生たちからは「見違えるように上手くなった」といった評価も多く、有意義な練習になったようです。
アタッカー班では、基本的な手のポジションやジャンプ、ステップを確認した後、アシスタントのアシストで実際にボールを打つという実践的練習を中心におこなっており、大山氏の指導のもと、終始元気な声があがっていました。大山氏は怪我をしにくい体づくりのためのポイントも含めて説明しており、柔軟性を高める重要性を強調していました。
別れて練習をした後、学校をミックスしたチームを8つ作り、バレーボールを2つ使用し、1回のパスで相手に返すというルールの試合をトーナメント方式でおこない、生徒たちは普段と異なる形式の試合に最初は戸惑いつつ、慣れると楽しそうに参加していました。7校の生徒がバラバラになっているチームにも関わらず、生徒たちは笑顔を見せて仲良くプレーしており、同じバレーボールという競技を楽しむ仲間として他の学校の生徒とも楽しんでいるようでした。優勝したチームには温かい拍手が送られ、指導した大山氏は、試合中にチームのメンバーとコミュニケーションをとることの重要性を改めて強調していました。
ゲーム終了後、大山氏と国体出場経験のあるアシスタントたちのスパイクを受ける機会が設けられ、ほぼ全員の生徒たちが威力のあるスパイクを目の当たりにして驚いていました。
クリニックの最後には質疑応答の時間が設けられ、生徒たちは大山氏を円状に囲み、思い思いに質問を投げかけていました。全日本代表選手、エース、オリンピック選手など、様々な経験を積んできた大山氏ならではの回答は、生徒はもちろん、顧問の先生や生徒の保護者にとっても刺激的であり、その場にいた全員が真剣に耳を傾けていました。
最後に大山氏から「怪我に気を付けて、仲間と楽しんでバレーボールをしてください」とメッセージが伝えられ、クリニックは終了しました。
○卓球・バスケットボール・ソフトテニス
大船渡市民体育館にて、卓球とバスケットボール、隣接する大船渡市民テニスコートにおいて、ソフトテニスのクリニックがおこなわれました。卓球のクリニックにはソウルオリンピック日本代表の宮崎氏、バスケットボールのクリニックには元女子日本代表の田中氏、ソフトテニスのクリニックには全日本優勝も果たした高月氏をそれぞれ講師としてお招きしました。卓球のクリニックには約45人もの中学生が参加し、宮崎氏の言葉に真剣な眼差しで耳を傾けていました。「卓球は個人競技。努力すればいくらでも上手くなれるチャンスがある。工夫して練習に取り組んでください」と自分自身の経験を交えながら子どもたちへの熱いメッセージが送られました。バスケットボールのクリニックには総勢80人もの参加者が集まりました。バスケットボールで大切なのは「強い体幹と強い気持ち」と田中氏から伝えられると、早速体幹トレーニングが始まりました。時折、トレーニングの辛さに苦笑いを浮かべた子どもたちでありましたが、ボールを使ったユニークなトレーニングを楽しんでいました。午後には試合がおこなわれ、田中氏のスーパプレーも披露されました。炎天下のテニスコートでは約140人の参加者が集い、ソフトテニスのクリニックがおこなわれました。最初に入念な準備運動がおこなわれ、高月氏から「ウォーミングアップが試合でのパフォーマンスを向上させる」と話がありました。その後、実戦練習がおこなわれました。「スマッシュやサーブは野球のボールを投げるイメージ」と技術指導もおこなわれ、子どもたちも必死に取り組みました。
参加者コメント
中学2年 男子
今日は元プロ野球選手の方の野球教室の参加させてもらえてうれしかったです。バッティングのコツも教えてもらい、次回からの練習に活かしていきたいと思います。
中学2年 男子
ウォームアップも練習もゲームも楽しかった。最後の大山さんの話が印象的だった。
中学2年 女子
大山さんみたいになりたいと思った。練習を頑張ろうという気になった。
中学2年 女子
元全日本選手だった人は違うなと思った。最後のスパイク体験がすごかった。
中学2年 男子
いつもよりためになる練習をすることが出来ました。パスも上手くいってよかったです。
中学3年 女子
女子バスケットボール界のスーパースターと一緒にプレーできて嬉しかった。
中学3年 男子
いつか講師の高月さんのような選手になりたい。
中学3年 男子
卓球という競技の魅力を改めて感じました。練習を頑張りたい。
アスリートコメント
秋田豊(元サッカー日本代表 鹿島アントラーズ・名古屋グランパスなど)
震災の被害を受けた子どもたちに、サッカーを通して元気になって欲しいと思い、いろんなトレーニングしたが、結構技術が高い子も多くかった。でも引っ込み思案なところもあるから、すごくもったいないなと思いながら、そこを引き出したいなと思ってやりました。引き出せた子もいれば、そうでない子もいたと思うけれども、ただ、やって皆の変化も見れたし、楽しかったし、やりがいがあったと思います。いろんな事情を持った子どもたちがいると思いますが、少しでもサッカーを通じて生きる勇気や希望というものを見出してくれたらいいなと思っています。
本柳和也(元プロ野球選手 オリックス・バファローズ)
今回はどう子どもたちと絡めるかを考えていました。講師としては野球の技術を教えていこうとは思っていましたが、ただそれだけではなく野球選手としてどう接することができるのかを重視して午後の試合の予定も変更させてもらいました。自分がピッチャーをすることで、ボールで会話できたと思います。どういう風に真剣に振ってくれるのかなと子どもたちの様子を見ていると僕自身も気持ちを伝えると同時に、逆に自分が気持ちをもらうことができました。子どもたちの真剣さ、頑張りを感じることが出来ました。
今後子どもたちが野球のみならずスポーツにどのような関わり方をするかわかりませんが、成長していく中でいろんな引き出しを試して欲しいです。ただ色んな引き出しを開けすぎて時間をかけてしまうと堂々巡りになってしまうので、ある程度試したら自分のやりたいことにスパッと照準を合わせて頑張っていってもらいたいと思っています。
宮崎義仁(ソウルオリンピック卓球日本代表)
どんなことでもいいので、好きなことを見つけてプロフェッショナルになって欲しい。そのためには、誰にも負けない努力が必要です。岩手の子どもたちには、その道の第一人者として道を切り開いて行って欲しい。大船渡には何度も来ているが、本当に元気がある子どもたちが多いので、この街から世界に羽ばたいていってください。
大山加奈(アテネオリンピック女子バレーボール日本代表)
子供たちが一生懸命やってくれていることと、笑顔で参加してくれていることがとても嬉しく、今回も参加して良かったなと思った。今後もこのような活動は是非続けていきたい。
バレーボールをやることに罪悪感を感じずに、楽しんで競技をやってほしい。子供たちが楽しんでバレーボールをやっている姿を見て大人たちも笑顔になり、地域が活気付くので、素直に思いっきり楽しんでほしい。
田中利佳(元バスケットボール日本代表)
楽しかったです。閉会式の時にも話したが、絶対に負けたくないライバルと憧れの選手を常に持っていてください。ライバルに絶対に負けないように練習し、憧れの選手に毎日少しでも近付けるように一生懸命努力してください。そうすれば、必ず道は開けると思います。
高月琢磨(2014年世界選手権予選優勝 2013年全日本選手権優勝)
多くの参加者に囲まれて本当に楽しかった。自分が取り組んでいる競技を本当に楽しんで、勝ち負けに捉われず心から楽しんで欲しいです。短い時間でしたが本当に充実していました。子どもたちには、自分の目標に向かって突き進んでいって欲しいと思います。クリニックの途中にも言いましたが、上手い選手のプレーを見てたくさん学んで欲しいです。