事業報告

エコノミークラス症候群対策事業 in 宮城

プロジェクト
パワーアップ・ジャパン from Tokyo
イベント名称
エコノミークラス症候群対策事業 in 宮城「歩く人。」ウォーキング教室/健康運動指導者研修会
開催日
2018年9月6日(木)、7日(金)

平成30年度パワーアップジャパンfrom Tokyoエコノミークラス症候群対策事業の第1弾が、宮城県東松島市大曲地区体育館にて2日間開催されました。大西一平氏(一般社団法人OVAL HEART JAPAN),土井龍雄氏(ダイナミックスポーツ医科学研究所)、佐藤真治氏(大阪産業大学)を講師として迎え、東松島市内居住者を対象に正しい歩き方を学ぶウォーキング教室(1日目)と、スポーツ指導やスポーツ団体に所属する方を対象に、指導者向けプログラムとして健康運動指導者研修会(2日目)を実施しました。1日目のウォーキング教室では、歩くために必要な筋力トレーニングやストレッチの理論と実践を楽しく学びました。2日目は、正しい歩き方を広めるリーダーの養成を目指して、専門的な知識や講師の実体験を交えた講義が行われました。本イベントは正しい歩き方とその重要性について学ぶことや歩行寿命の延伸に寄与する有意義な機会となりました。

○1日目:「歩く人。」 ウォーキング教室の様子

参加者は受付後、順次、歩き方テストを行い、自身の歩き方の測定・評価を受けました。開会式後、大西氏から本プログラム「歩く人。」の概要や組織設立の経緯について説明がありました。歩くことは動脈硬化性疾患やロコモティブシンドローム等の予防に効果的で、いかに歩行寿命延伸が重要か説明されました。歩行寿命を延ばすためのトレーニングでは、お尻、太もも、すね、ふくらはぎのストレッチの実践や筋力トレーニングの見本を示しながら今日から実践できる練習法を学びました。テキストやチェックシートも配布され、それぞれのポイントや注意点など細かな指導がありました。

○2日目:健康運動指導者研修会の様子

2日目にも冒頭に、大西氏より「歩く人。」プログラムの概要説明がありました。1日目と違い、健康運動指導者研修会として、歩くリーダーの養成を目的に催されたため、大西一平氏、土井龍雄氏、佐藤真治氏の3名からそれぞれの専門的な講義が行われました。大西氏からは運動を継続していく難しさや、周囲の人々や地域を巻き込んでいくリーダーの重要性とその役割について話がありました。土井氏からは、軟骨減少によって引き起こされる関節痛などで困っている高齢者が多いという観点から関節に負担がかからない筋力トレーニングや歩き方の実践が行われました。佐藤氏は当日、誕生日であったこともあり、若さを保つための歩き方講座という特別な講義が行われました。参加者の中には2日間とも参加された方がおり、両日とも充実していて楽しかったなど、大変満足された様子が見受けられました。

アスリートコメント

大西一平(一般社団法人OVAL HEART JAPAN 代表)

Q本日の感想を教えてください
Aまず、この東松島市は防災移転で復興住宅とかがかなり整頓されて、良い環境に皆さんも落ち着かれて生活されていることがよく分かりました。ただ、惨事的な問題としては高齢者の孤独死がしばしば起きている。皆さんがそれぞれ歩いたり、スポーツするというよりも、なにか地域の一体感をつくっていくというのも重要なのではないかと感じています。だからこのイベントだけに参加するのではなく、今後、継続できるコンテンツをやる地域を根づかせていって、それを楽しみながら体力づくりであったり、健康維持していくようなことが必要なのではないかと思います。今回は「歩く」ということを学習していただくことがメインであったけども、一緒にやっていただくことの意義であったり、1人ではなく多数で行動を起こすことであったり、地域の絆を高めながら活動することの重要性をお話ししました。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A健康事業に対する参加率は非常に高まっている。しかし、参加者を見るとやはり女性が多い。怖いと思うのは男性の孤独な高齢者の方にどのように働きかけるかということと、もう1つはここに参加している人は既に健康意識が高いということ。その方々が正しい知識を持って地域に根付かせていくリーダー的な活動をしていくことが次の段階なのではないかと思います。そうでないと意識の高い人とそうでない人の差が大きくなってしまうので、もっと奥まで入り込めるように地域の参加者や行政と交流して声を聞いてアドバイスや指導をしていきたいと思います。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A参加者の動いている姿を見て、みなさんそれぞれ取り組んでいらっしゃるのだなとよく分かりました。環境もよく、立派な体育館もあるので、それを活かして、自身のこともよく知って、長く長く歩ける力をつけて、亡くなられる手前まで自分自身の力で歩くということを心がけていただきたいです。

土井龍雄(ダイナミックスポーツ医科学研究所 副所長)

Q本日の感想を教えてください
A「歩く人。」の活動を始めて7年が経過したのですが、被災地自体の状況が変わってきていて、いわゆる被災地だから「歩く人。」が必要なのではなくて、超高齢社会を迎えていて、要介護の人が増えないように、介護の問題を解決していかなければならないという必要性を皆さん感じられていると思いました。それは被災地だけの課題ではなくて日本全国の課題なので、そういう意識を持った参加者が見受けられて、やはり皆さんも最後まで自分の足でしっかり歩いていきたいという気持ちを持っていたのが印象的でした。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A被災地の環境自体が変わってきていて、仮設住宅から復興住宅になっていたり、戸建てに住まわれたりと環境が変わっている。まだ震災の爪痕は所々に残っていて、流されてさら地になっているところもありますが、皆さんはその新しい環境に馴染んできている。しかしながら被災地は超高齢社会になっていて、非常に要介護の人が増えたので、まずはそこから手を付けなければならない。先ほども申し上げましたが、日本全国の問題なので、元気に歩ける高齢者を増やさないと、日本の国自体が立ち行かなくなる。我々は小さな力でやっていますが、出来ればこの輪を広げていって、大きな形、つまり国の政策までやってもらいたいなというのが希望です。そういった意味で指導者を養成していますけど、その輪をもっと大きな力でバックアップしていただいて、日本の介護費用等の削減に繋がれば良いな思います。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A元気で自立してやりたいことをやって、生涯をおくるっていうのが1番なので、ぜひ、我々が提供させていただいたプログラムを日常の生活にも取り込んでいただいて幸せに、つまり自分の足で歩いて好きなことをやって暮らしていただきたいと思っています。

佐藤真治(大阪産業大学スポーツ健康学部 教授)

Q本日の感想を教えてください
Aこれまで何度も被災地に足を運んでいますけど、手ごたえ感はこれまでで1番あります。「手ごたえ感」というのは、我々は地域で歩く人を増やしたいんですけど、本当に東松島市の人たちは、この場所で我々のプログラムをある程度取り入れて歩く人を増やしてくれるような予感がします。思い込みかもしれないですが、実際に震災から7年経て、少しずつですが前を向ける人が増えてきたのだろうなと思います。参加者の皆さんが明るいです。数年前まではこの明るさは無かった。「時間薬」という言葉があるように、時間が経つにつれて明るさや前を向く力を取り戻しているのかなと思います。そういうことも含め手ごたえ感がありました。一方で、孤独とか孤立とかの話題を振ると突然皆さんの顔が曇る。それが大きな問題で今度は、こういうところに集まってこられる人は大丈夫だと思いますが、そうではない人が結構まだいらっしゃる。その人たちと今後どのように関わっていくかが問題として依然として残っている。そう考えると「歩く人。」のプログラムがここにいる人達に歩いていただいて健康になってもらうだけでなくて、この人たちが、孤立している人たちに声をかけて、一緒に歩いてもらう行動を選択してもらえたらいいなと思います。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A被災地だけには限りませんが、地域の絆であったり、コミュニティが分断されている地域にこの「歩く人。」のプログラムが繋ぐ役割になっていければいいなと考えています。車で移動している人とは挨拶も出来ずにすれ違ってしまうけど、歩きだったら挨拶することもできる。そういったことから、違う価値観を持っていたり、他所から来た人であったとしても、この「歩く人。」プログラムが、今後、繋ぐ役割を果たしていけるようにしていきたいです。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
Aいまだ開発の途上にあって温度差やいろいろな差があると思いますが、ここに集まって参加してくれた方々がこれからの東松島市を引っ張ていく存在であると思います。その時にここに参加できなかった地域の人にお節介でも声をかけていけるような東松島市になっていっていただけたらいいなと感じています。また我々はよそ者ですけど、よそ者にはよそ者にしか見えない視点があるので、そういった役割を果たせていけたらいいなと思っています。皆さん、頑張ってください。

参加者コメント 〈1日目 ウォーキング教室〉

50代 女性
100歳体操に参加していて今回の教室を知り、参加しました。去年にもこのような歩きの教室に参加した経験があるのですが、内容が細かくて充実していました。どの教室もそうですが、みんなでやることが大事なので今後とも継続して習ったことができるようにしていきたい。

60代 男性
普段は歩く習慣がなく、どのような歩き方が1番効果があるのか、参考になることがあればいいなと思い参加しました。歩行のテストでは身体に負担がかかる歩き方をしていたので、今回参加したことをきっかけに歩き方を意識して歩くことを習慣付けてみようと考えています。

70代 女性
普段から歩いているので、自分はどのように歩いたら良くなるのか知りたくて参加しました。歩行テストの結果を見たら、身体に負担がかかっている赤のマークがいっぱいあったので直さないといけないなと感じました。よく腰が悪くなるのはこのような原因があったのかと知れたので良かったです。

60代 女性
市報で拝見して参加しました。指導者の方々が関西出身のためかユーモアがあって話が面白くて楽しかったです。筋トレ以外にも笑って体験できたのですごいエネルギーになりました。継続は力なりといいますけど、なかなか継続していくことが難しいので気を付けながら習ったことを続けていきたいです。

60代 男性
地区の公民館に募集チラシが貼られていて、このイベントがあることを知り参加しました。外を歩いたりジョギングしたりしているので参考になると感じました。家の中でも椅子に座ってできるストレッチやトレーニングが勉強できたので良かったです。今日習ったことを復習しながら歩いていこうと思います。

参加者コメント 〈2日目 指導者研修〉

20代 女性
学校のカリキュラムの地域看護学実習で東松島市に来ていて、保健師の活動を学ぶための一環として参加しました。地域の高齢者の方々にどのように教えたら良いのか、高齢者のお身体の状態がどんな感じなのか学べたのでいい機会になりました。これから病院実習とかで高齢者の方々と関わる機会が多くなるので、筋力が弱くなっていることなど気にかけながら接していきたいなと思いました。

20代 女性
私も、実習の一環で参加しましたが、実際に自身の歩き方データを取っていただいて、歩行時の上下運動が自分は大きいと分かったので、今回習った歩き方を意識して上下運動を減らして身体の負担を減らしていけたらいいなと思います。家に祖母がいるので、今回習ったことを教えながら、転倒予防や歩行能力の維持・増進につなげられたらいいなと感じます。

60代 女性
東松島市のレクリエーション協会に所属していて、その中でゆるレク体操や高齢者対象の教室を持っているので、この教室で学んだことが生かせないかなと思い参加しました。また自身の健康にも関心があるので歩き方を習って健康になりたいと思って参加しました。イベントは2日間参加しましたがとても良かったです。初日は初日でポイントがあり、2日目は2日目で指導者側の視点でポイントを教えてもらったので満足しています。2日間参加することで納得感もありました。

60代 女性
東松島市で100歳体操を行っていて、高齢者の人が人に迷惑をかけずに健康で長生きてしていこうというプログラムなのですが、この歩き方教室が役に立つのではないかと思って参加しました。私は介護職なので、悪い歩き方をしている高齢者をよく目にするので、今回、土井先生が見本で示してくれましたが、このような歩き方をすればいいんだということを習いましたので生かしていけたらいいなと感じます。私自身、歩き方の講習を受けて歩き方の意識ががらりと変わりました。